〜薔薇藤井桁 Web拍手連載小説〜 Recht und Freiheit 第一話 〜気配〜 もういつからその夢を見出したかなんて覚えていない。 気が付いたら、もう俺は暗闇の中へ放り出されていた。 何もない闇の中で、『何か』が俺の名前を呼んでいる、とても恐ろしい夢。 「さ…け……すけ」 この夢をまだ悪夢だと感じていなかった時は、 その声すら認識できないほどにか細いものだった。 しかし、時を重ねる毎にその声はだんだんと大きくなっていき、 コツ、コツ、と何も見えない筈なのに足音の様な物が聞こえるようになった。 ぐるりと見渡しても闇、闇、闇。 人の気配などしない。 かと言って、自分の存在も確定していないのではないかと思うほど、 その空間は酷く不安定で、上も下も右も左もない。 浮いているようだが、しっかりと足は地面を捉えているようだった。 そんな夢を見るようになって、もうどのくらい経ったのだろう。 ある日耳元で確かに、ソレははっきりと俺の名前を囁いた。 「さすけ」 その声を聞いた瞬間、恐怖という大きな塊が頭に直撃したように 前が見えなくなって、途端に大声を出して飛び起きていた。 「うわああああぁぁぁ!!!!」 ガバリと身体を起こし、 その反動で大きくベッドがスプリングした。 揺れよりも早く鳴る鼓動、はぁはぁと荒い息。 全身からは冷や汗が吹き出し、髪はべっとりと皮膚にはりついていた。 ガタガタと異常なまでに震える身体を抱きしめ、 まだ暗い窓の外へと顔を向けた。 月明かりが部屋に差し込み、優しい光で自分を照らしている。 「……っ…う…」 今までに感じた事のない恐怖。 悔し涙の様に流れるそれを、俺は止める事が出来なかった。 握りしめる手はジーンと何故か痺れている。 自分の中に知らない存在が居座ってる気がした。 それが何なのか自分にはわからないが、 ソイツには自分の何もかもが知られているように感じる。 俺が感じた事、見た事、考えている事、全部…全部。 そう考え付いた瞬間、急に嘔吐感が喉に込み上げ、 ゴホゴホと咳き込んだ。 気持ち悪い。 自分の中を隈なく覗かれている感覚は、気持ち悪い意外に何もない。 「何なんだっ…一体…」 何かに取り憑かれたとしか思えない。 しかし、俺は幽霊とか非現実的な存在を信じていなかったし、 この苦しみがそのような抽象的な物で片付いてくれるほど簡単な事ではないと 何処か心の中でわかっていた。 でも、それでも、自分の大きな変化を認めたくなかったんだ。 この今までにない違和感を、 認めたくない。認めない。 俺は、俺だ。 「スー……はぁー…」 全て落ち着かせるように、ゆっくりと深呼吸。 身体に入って来る酸素が妙に新鮮な気がした。 そして早まる鼓動も、荒くなった呼吸も、次第に静まり、 俺は漸く自分を取り戻す事が出来た。 「ははっ…こんな姿…幸村に見せられないな」 脳裏によぎった無邪気な幼馴染。 彼は俺がこんなにも苦しんでいると知ったら、どんな顔をするのだろう。 きっと、自分の事の様に親身になって俺の話を聞いて、 俺の為にたくさんの事を調べてくれるんだろうな。 幸村の一生懸命な姿が容易に想像出来、 その可愛らしさに俺は小さく笑った。 その時に、トクンと小さく心が跳ねたのを、 俺はまた、知らない振りをした。 知らぬは曇天の如く。 (それが何を示しているかなんて、考えたくもない) To be continue




☆★あとがき★☆
み…短い!!! そしてPrologueとあまり変わらない…!!! 全く同じ様な感じになってしまった…!! あうあう(´;д;`) すみませんすみません;;;;;; 次回からはキチンと出します! …多分…orz←← では!お読みおただきありがとうございました!! 小説の感想、など気軽にお申し付けいただければ幸いです^^ これからもよろしくお願いいたしますー!!! 只今第三話公開中!→ web拍手