〜薔薇藤井桁 Web拍手連載小説〜 Recht und Freiheit 第二話 〜浸食〜 「ふぁ…」 形だけと閉じていた目をパチリと開けて、 カーテンの隙間からのぞく光に、朝が来た事を教えられる。 佐助は大きく欠伸をし、重い瞼を手で乱暴にこすった。 1人暮らしの寂しい寝室のベッドから降り、 頭をボリボリとかきながら洗面台へ向かう。 ―今日も…眠れなかった― バシャバシャと水を跳ねさせながら顔を洗って、 タオルで水分を拭きながら顔を上げると、 眼の下に隈を作って、随分痩せた姿の自分。 「何て痛々しい姿だ」と自嘲気味に笑い、 佐助は深いため息を吐いた。 そして濡れたタオルを乱暴に洗濯機の中へ放って、 寝間着にと来ていた黒いTシャツを脱ぎ捨てた。 『俺…今日もちゃんと笑えるかな…』 昨日の内にアイロンをかけておいたYシャツに腕を通し、 ぼんやりとそんな事を考えながら制服へと着替える。 明らかにやせ衰えた自分。 それを心配する仲間。 確かに嬉しかったが、 そこまで心配をさせるくらい弱ってしまった自分が腹立たしかった。 『たかが夢に…此処まで苦しめられるなんてね』 自嘲気味に笑って、着々と登校への準備を進める。 ペンケースやノートをきっちりと整え、 昨日の内に作っておいた弁当を二つ入れる。 一つは自分用。もう一つ大きいのは幸村用。 忘れ物はないかもう一度鞄の中を確認してから、肩にかける。 ピンポーン… 「? 誰だろ…?」 さぁ家を出ようと言う時に鳴ったチャイム。 佐助は鞄を肩にかけたまま、玄関を開けた。 「はいはーい。どちらさま…」 「おぉ!佐助!!なんだ、いないかと思ったぞ!」 「幸村っ!!?」 急いで玄関のドアを開けると、走ってきたのか、 少し息を切らし、額に汗が滲んでいる幸村がいた。 ドクン…! その姿を目に捉えた瞬間に、 心臓に受けた、強い衝撃。 あまりの強さに一瞬、息をするのも忘れ、 佐助はとっさに自分の心臓らへんの衣服を掴んだ。 「…?…どうした、佐助?」 突然の行動に戸惑ったのか、 幸村が心配そうに佐助の顔を覗き込んだ。 そして佐助も幸村の顔を見返したが、 先ほどの様に心臓は過剰に反応しなかった。 「大丈夫。ちょっと動悸がしただけだよ」 思いすごしか、と自分で片付けて、 幸村に笑いかける。 彼はまだ心配そうだったけど、「大丈夫」と再度いい、 「忘れ物をした」と告げて、少し早足で家の中へと引っ込んだ。 「……な…んだ、今の…?」 バタン、とドアが閉まる音を聴き、 閉まったドアに寄りかかりながら呟く。 こんな事、今までなかった筈なのに、 どうして突然、俺の心臓は跳ねたのか。 自分の身に起こる事が理解できない。 次、何が起こるかも予測できない。 それが、堪らなく佐助に恐怖を植え付けた。 「スー…ハァー…」 深く深呼吸をし、 パァンと両手で頬を叩く。 「しっかりしろ。他の皆に迷惑がかかるような真似だけはしない。」 そう言い聞かせ、 佐助は意を決して玄関のドアを開けた。 「お待たせ!“旦那”!!」 精一杯の笑顔を向けて、幸村に言う。 すると彼は驚きに目を丸くしていた。 勢いよくドアを開けてしまったから驚かせてしまったのだろうか。 そう思って謝ると、幸村は両手をブンブンふって否定した。 「あ!いやそうではない!!…ただ」 「ただ?」 「ただ…お前が俺を聞きなれない呼び方をしたのでな。少し驚いただけだ」 トクン、と今度は緊張から心臓が跳ねた。 冷や汗ともとれる汗が噴き出て、 背中をつう、と流れるのを感じる。 「聞きなれない…呼び方?」 「? 自覚しておらなんだか?」 「お前、俺の事を“旦那”と呼んだであろう?」 少しずつ、狂い出す歯車。 知らない記憶が、知らないうちに植え付けられ、 そしていつか、知らない俺になるのだろうか。 この内で、静かに笑う“誰か”によって。 たる男の微笑。 (知りたくない知りたくない。少しずつ自分が変わっていく様なんて) To be continue




☆★あとがき★☆
第二話です^^!!!! やっと幸村登場…!! えっと今回は、少しずつ自分が知らないうちに変わってきてしまっている事を自覚した佐助…(長いよ!) を感じとって頂ければいいな…って感じです…! 何だかごちゃごちゃですね…orz スミマセン…;;;;; では!お読みおただきありがとうございました!! 小説の感想、など気軽にお申し付けいただければ幸いです^^ これからもよろしくお願いいたしますー!!! 只今第三話公開中!→ web拍手