涙なんて枯れた。 感情なんて捨てた。 それなのに、 それなのに。 こんなにもアンタに触れたいと思っている俺は 闇にもなれず、 人にもなれない中途半端な存在。 ばいばい。ばいばい。 「佐助」 普段は、名前で呼ばない人なのに、 二人きりの時には決まってそう呼ぶ。 背中に感じる熱を心地よく思いながら 小さく「ん?」と返事を返した。 二人裸で布団の中で横たわり、 行為で気だるい体をゆっくりと其方に向けると、 彼は大きな手で、俺の髪を撫でた。 「…なぁに?小十郎さん」 「いや…何でもねぇよ」 そう小さく笑った顔が、月明かりに照らされて いつもより格好良く見えた。 少し乱れている髪もその要因の一つだろう。 撫でられ続けている手は、とても暖かく、 心地よくて、俺はゆっくりと瞼を下ろした。 「何だ、寝るのか?」 「ん…誰かさんが頑張っちゃったせいで…くたくたなのー…」 「はっ。褒め言葉としてとっておくぜ」 「ふふ…あー…でもダメだ。寝れないや」 「あ?目が覚めちまったのか?」 「違うよ。ホラ、時間。もう帰らなくちゃ」 「…まだ大丈夫だろ」 「だーめ!帰って怒られるの俺様なんだから…」 俺は撫でられていた手をやんわりと払い、体を起こそうと腕に力を入れる。 しかし、それは背中に回されていた小十郎さんの手によって阻まれ、 ボフっと音を立てて布団の中に戻された。 「Σうわっ!」 「………」 「ちょっとー…何、小十郎さんらしくないんじゃない?」 「…そうかもな」 耳元で囁かれた低い声に、不覚にもドキっとしてしまったが、 俺は気を取り直して小十郎さんの背中をポンポンと軽くたたいた。 「どうしたの。いつもは『さっさと帰れ』ぐらい平気で言うくせにさ」 へらっと笑いながらそう言うと、 彼は少し真剣な顔で俺を見つめ、言葉は発さなかった。 不思議に思い俺もそれ以上は何も言わず、しばらく見つめ合っていると、 先ほどのように、また大きな手が俺の髪を撫でる。 「ずっと…思ってたんだが」 「ん?」 「お前、俺の側で働かないか」 「……え…?」 その口から吐き出された大きな爆弾の意味を、 俺はしばらく理解できなかった。 困惑しているのを感じたのか、 その後も彼は爆弾を落とし続けた。 「給与は真田の倍出してもいい。何でもお前の望む物は与えてやる。住む場所、服、食事。何も不自由はさせねぇ。……どうだ」 反応をうかがうように、彼が俺の顔を覗き込んだ。 俺はしばらく小十郎さんの瞳を見つめていたが、 また髪を撫でる手と、背中に回る腕からすり抜け、 床に散らばる自分の服を身に付けた。 「おい…」 「ダメだよ。右目の旦那」 「……佐助」 「俺は、真田を…旦那を裏切れない。アンタだってそうだろ?」 「………」 「アンタは絶対に、『政宗様』は裏切れない。大切な物を切り捨てたって、彼を守るはずだ」 「………」 「それと一緒!じゃ、またね〜右目の旦那ぁ」 彼の顔は見ず、部屋の窓に足を掛けた。 ガシャンと体中にある武器が当たって音がなる。 後ろで小さく自分の名を呼ぶ声がしたが、聞こえないフリをした。 「次、会うときは戦場(いくさば)かもしれない」 「………」 「旦那がアンタを殺せと言うなら、俺はアンタを本気で殺すよ」 「…っ…佐助っ!」 「だからさ。約束」 「……?」 「アンタも、『政宗様』に俺を殺せと言われたなら、容赦なく俺を殺して」 「!?」 「約束だよ」 そう小さく言葉を吐くと、俺は窓から飛び降りた。 音も立てずに屋根に降り立ち、すばやく駆け、森の闇へと姿を隠した。 走っても、走っても。思い浮かぶは彼の顔。 邪念を捨てろ。そう忍である俺が叫ぶ。 『お前(俺)は忍だ。感情などいらない。ましてや恋慕など、刃を鈍らせるだけの感情だ』 恋慕?違う。これはそんな想いじゃない。 俺はあの人の心の中へ入り込んで、油断させてから暗殺をしようとしてるんだ。 俺は何も感じてない。何の思い入れもない。 『じゃあ何故殺さない?もう充分、彼の心にはお前がいる。今日だって、あんな話を持ちかけられたじゃないか』 時じゃないと思った。 今殺したら、きっとあの若頭は腹を立てて甲斐を狙うと感じた。 殺すなら、伊達軍が戦で疲労した後を狙うのが一番だと思ったからだ。 『じゃぁ、あの約束の意味は?あんな約束、邪魔でしかないじゃないか。 彼がお前(俺)を殺すとき、躊躇してくれれば隙ができて殺しやすい。そうだろ?』 それは…。 口から、勝手に出てきたんだ。 あの時、ああやって言わなければいけない気がして。 何故かはわからない。否、わかりたくない。 わかってしまったら、きっと俺は自分を許せなくなる。 この気持ち自体が、旦那を裏切ることになってしまうのだから。 *** 「だーんなっ!!」 「うぉっ!?さっ佐助!!」 武田軍真田別小部隊陣。 その中心で立っている旦那に、気配は消して後ろから声をかけた。 案の定旦那は肩を大きく揺らし、驚いた様子だったが、 すぐさま冷静さを取り戻していた。 その様子から思い当たる節はただ一つ。 「何々?遂に果たせる竜の旦那との勝負の前で興奮でもしてるわけ?」 「……むぅ」 「ははっ、図星だ。まぁしょーがないでしょ。待ち望んでたんだもんね」 「…あぁ。ずっと、心待ちにしておった」 いつもの「団子!」と急かす人物とはまるで別人のように、 旦那は遠くを見つめながらそう零した。 本当に心待ちにしていたのが、すごく伝わってきて 俺はそれ以上何もいわなかった。 「ほら、旦那。戦が始まる」 法螺吹きの野太い音が響き渡る。 俺たちの周りの兵も、それぞれ武器を握り直し、 緊張の空気が張り巡らしている。 誰かのごくりと唾を飲む音が聞こえたかと思うと、 旦那が大きな声で叫んだ。 「真田別動隊!!!いざ参るぅぅううあああああ!!!!!」 「「「「うおぉおおおおおおおおお!!!!」」」」 「ちょっとちょっと!別動隊がそんな大きな声だしちゃダメでしょうが!!敵軍の裏を掻く作戦なんだから!!!!」 「Σはっ!そうであったな!!皆静まれぇい!!!!」 「まったく…。世話が焼けるんだから…」 クスリと小さく笑って、俺は前だけ見つめる赤い背中を追いかけた。 忍特有の速さで旦那が乗る馬の隣に追いつく。 「佐助」 「はいよ。どうしたの?」 「…政宗殿との勝負になるまで、傍にいろ」 「うん。わかった、旦那の背中、預かるよ」 そう告げると、旦那は嬉しそうに笑って、「流石、俺の忍だ」と言った。 しかし、すぐにそれは真剣な目に代わり、 そしてその先にはもうすでに始まっている武田と伊達の戦場が広がっていた。 「行くぞ!!佐助ぇい!!!」 「はいよっ!旦那ぁ!!」 武器を構え直し、俺は血が飛び交う戦場へその身を投げた。 人を切り、その返り血を浴び、旦那の背中を守り続けた。 俺は、真田十勇士・長、猿飛佐助。 真田源次郎幸村様をお守りする、最強の武器也。 それ以上でも、以下でもない。 *** 「この先に…政宗殿が…!!!」 遂にたどり着いた伊達本陣の前。 まだ乱闘は続いているが、大将である伊達政宗を倒せばこの戦は終わる。 大きな扉の前まで駆けると、そこに見覚えのある背中があった。 「貴殿はっ!!」 旦那が気付き、その足を止める。 そこには、何度も身体を交え、耳元で甘い言葉を囁き合った相手がいた。 あの夜、自分の傍で働けと、そう告げたあの人が。 「片倉…小十郎殿!」 「真田ぁ…てめぇ、こんな所まで何の用だ。此処に来るまでに何人もの兵がいたはずだが…?」 「愚問でござる!!すべて撃破して参った!片倉殿とて立ちはだかるのならば、容赦はせぬ!!」 「は!そいつはよろしいこった…。此処はそう簡単には通させねぇぜ?」 「うおぉぉぉおおおお!みなぎるぅあああああああ!!!!!」 二人が同時に地を蹴り、切りかかった。 しかし、その瞬間俺はその二人より早く移動し、 右目の旦那の刃を俺の手裏剣で受け止めた。 「っ!?」 「佐助っ!?」 突然目の前に飛び込んできた俺に旦那は驚き、ピタッっと動きを止た。 目の前の男は、驚いた顔をして俺を見ている。 その目に視線を合わせ、じっと彼を見つめながら、 後ろに立ちすくんでいる主に声をかけた。 「ごめんね〜旦那。此処は俺様に任せてくれない?」 「なっ!何を申すか!そのような事…!」 「アンタはまだ独眼竜の旦那との勝負があるだろ?此処で体力消耗したらもたないよ」 「ぐっ…しかし!これは俺の戦い!背を向けて逃げるわけにはいかぬ!!」 「逃げるんじゃない。任せるんだ、旦那」 「任せ…る…?」 「そ。信頼してくれてるならさ。任せて先に行って。旦那」 「佐助っ!」 「背中、最後まで預かれなくてごめんね」 旦那は、まだ何か思いとどまっていたけれど、 意を決して走り出した。 しかしそれを阻止しようと、 右目の旦那は俺と競り合っていた刀を勢いよく離して そちらへ飛び出し、走る旦那に切りかかった。 「簡単には通さねぇと言ったはずだぜ?」 刃がその背中まであと少しだというのに、旦那は後ろを振り向かなかった。 当然、俺様はまたその間に飛び込み、同じように刃をはじく。 「俺様も、そう簡単には旦那を傷つけさせないよ?」  チッと小さく舌打ちした音が聞こえた。 後ろへ飛び移って間合いを取って武器を構えなおした。 扉の方へ顔をチラリと向けると、人一人通れるほどに開いている。 どうやら旦那は無事に先へ進めたようだ。 そしてまた前に目を戻した瞬間。 目の前には刀の切っ先。 「っ!!」 すばやく上半身を横へ投げ出し、その切っ先をよける。 少し間に合わず、頬に血が伝う感触がした。 俺は地面に右手をつけ、それを軸に相手の足を払う。 しかし、それは見事にかわされ、次は横へ一文字に刀が振りぬかれた。 俺は急いで印を結び、闇の力で地面の中へ身を隠す。 そして一瞬で後ろに回り、大型手裏剣をその背中へ向かって振り下ろした。 ガキィン!! 「はっ!…やっぱ、これぐらいじゃ、やられてくれないか…」 「…お前もな」 武器を押して、また間合いを取る。 今度は一度も目を離さず、しかし俺は余裕な笑みを張り付けて彼を見つめた。 右目の旦那は、いつもの真剣な顔で、俺を睨みつけていた。 「…随分、舐めた真似してくれるじゃねぇか」 「あ、旦那の事?しょうがないでしょー。二人は好敵手なんだから。それにお互い戦うことを望んでたと思うけど?」 おどけた様に笑ってそう問うと、 ピクリと眉が少し動いた。図星の証拠。 「ほらね。俺様たちが水差すことじゃないでしょ?」 「だが、俺は政宗様を、生涯を通じてお守りすると誓ったんだ。この勝負で政宗様の御命の危険がでた場合、俺は真田を殺すぜ」 「…ふーん。なら、俺様は旦那を殺そうと企む右目の旦那を殺すよ」 「………」 「命令じゃないけど、戦だからね。殺し、殺されの世界だ」 「同感だな」 ガチャリ…とまた武器同士がぶつかる音が鳴った。 緊迫した空気の中、踏み出した足はどちらが早かったのかはわからない。 もしかしたら、二人同時だったのかもしれない。 気がつけば反射神経にすべてを任せ、攻撃を繰り出し、防ぎの攻防戦。 流石竜の右目の実力は伊達じゃない。 隙は全くと言っていいほどなく、首を狙う攻撃は鮮やかだ。 だが俺様だって、真田隊の長。 次々と繰り出される攻撃をすべて交わし、最小限の動きで相手の急所を狙う。 「っ!…中々やるじゃねぇか!!」 「アンタも…ねっ!!」 何度も金属がぶつかり合う音が鳴る。 しかし、どちらの武器も、まだ相手の身体を貫いてはいなかった。 互いに頬や腕、足などをかするだけで、致命傷はない。 そして長時間にわたる闘争にだんだんと息が乱れ始めた。 「はぁ…はぁ…っは」 「っん…ふー…ふー…」 お互いを睨みつけ、隙を探し、刃を振るう。 しかしそれも次第に鈍くなっていき、 最初に比べると、随分振りが大振りになってきた。 そして、上から下へ、一直線に振り下ろされた刀を、手裏剣で受け止めたが、 戦いの疲労からか、足がガクンと折れ、後ろへと傾いた。 「やばっ…!!」 その好機を、この人が見逃すはずもなく、 俺は地面にあおむけに倒れ、そして首には刀を突き付けられた。 完全な俺の負け。 「あ〜ぁ。ヘマしちゃった」 ため息と一緒に疲労の息も吐き出す。 この状況になって逃げ切れるとも思えないし、 体力も限界を超えていて、腕もピクリとも動かない。 手の力をゆっくりと抜くと、 握りしめていた大型手裏剣が、ガシャンと音を立てて地面に落ちた。 「抵抗はしない。さぁ、殺しなよ」 そう笑うと、彼は眉ひとつ動かさず、そのままじっと俺を見つめた。 その間も、俺は笑顔を保ち続け、自分の首と身体が離れるその時を待った。 俺は忍。殺されるその瞬間も、人を騙し、本当の自分は決して出さない。 そう教えられてきた。そう育てられてきた。 今更、死など怖くはない。 「…あの夜の事は、覚えているか」 「え…?」 「もう一度言う。俺の傍で働け。そうすれば、命は取らねぇ」 容赦なく切られると思っていた俺は、 その言葉に驚きを隠すことができなかった。 相手の心理を探ろうと、その顔を見つめてみても、 先ほどから、その表情は変わらず俺の言葉を待っているようだった。 「…佐助」 低く、囁くようにそう呟かれた自分の名に、 俺は無意識にビクンと身体を揺らしていた。 二人きりで抱き合っていた時、何度も何度も、愛しそうにその名を呼んだのは、 紛れもなくその声。 「っ…!それ、俺様を揺さぶってるわけ?ごめんね〜。生憎忍にはそういうのは通じないよ。 何度も言わせないでくれる?俺は死んだって旦那を裏切らないよ」 動揺なんて、していない。 俺はこの人に何の感情もないのだから。 主への忠誠心を持ち、主のために死ぬのが俺の幸せ。 どんなことが起こっても、主を裏切るような真似は絶対にしない。 「アンタが俺様をどう想ってたって、俺はアンタの事を何とも想ってないよ。 だってそうだろ?俺とアンタは敵同士。絶対にアンタを想うことなんてない。 それに、俺はアンタの心の中へ入り込んで、隙あらば殺そうと思ってたんだから」 「………」 「でも、ま。流石竜の右目様だよね。十分信用されてたと思ってたけど、 肝心な情報は何一つ漏らしてくれなかったし。もしかして、俺様の思惑気がついてたわけ?」 感情を顔から殺し、捲し立てるように言葉を連ねた。 彼の表情は先ほどとさして変わっていない。 それが何だか頭にきて、気が付いたら声を荒げた。 「殺せよ!!アンタがどんな事を言ったって俺の答えは変わらない!!」 張り付けていた笑顔が消え、俺の顔は憤怒に染まっていた。 常に冷静さを忘れないようにしていたけど、 今は何故か怒りの感情が前へ押し出て、 自分で止められなくなっていた。 「何とか言えよ!さっきから俺様を馬鹿にしてるわけ!?」 目が痛くなるほどに、きつく彼を睨みつけると、 本当に一瞬だけど彼の目が悲しみに染まった。 其れを感じとってしまったのは忍の性なのか。 その一瞬で、本当に彼は俺を求めていると、わかってしまったのも、 忍の性だと言うのか。 頭の中に、彼のその瞳が焼きついた。 悲しそうにした瞳が、俺のまだ「人」の心を呼び戻そうとしていた。 必死に隠し、消し去ろうとした其れを、 まるで「必要だ」と叫び、手を伸ばすように。 「…止め…ろ」   止めて。止めてくれ。 俺は忍。感情なんていらないんだ。 それなのに、アンタの瞳、声、手、その全てが、 今まで作り上げてきた俺を否定し、 そしてぐちゃぐちゃにかき回してしまう。 「猿飛佐助」が、壊れていってしまう。 「そんなっ…そんな目で俺を見るなよっ…!!」 今まで、こんなにも恐怖を感じた事があったのだろうか。 子供の頃から、拷問の様な修行にも耐え、感情を捨てて、 喜びも、悲しみも、ましてや恐怖なんて、全部消えてなくなったはずなのに。 無意識に、カタカタと震え出す身体。 止めようにも、身体が震え出す何て初めてでどうすればいいのかわからない。 わからない。知らない。 何だ?この感情は。この感覚は。 「佐助っ…!」 フワリ、と温かいものに包まれる。 それはあの夜に、いつも嗅いでいる心地いい香り。 頭を覚醒させ、状況を見渡すと、 彼は俺を優しく抱きしめてくれていた。 俺の首に当てられた刀は、すぐ傍に落ちている。 「こ…じゅう…ろ……さ」 「もういい。何も言うんじゃねぇ…!」 「はは…何それ…。俺様死んじゃうみたいな台詞…まぁ、強ち間違ってないけど…」 「馬鹿野郎…」 そう言って、小十郎さんは俺を抱きしめる腕を強くした。 少し苦しかったけど、温かくて、心地がいい。 殺せ! 頭の中に響いた誰かの声。 それはあの時の、忍の俺の声だった。 殺せ!殺せ!今ならやれる!今ならやれる! 両腕に力を入れる。 大型手裏剣の感触。 バレないようにそっと握りしめる。 少し持ち上げる。 大丈夫。バレてない。 『そのまま殺せ!それがお前(俺)の役目だろう!? 気付かれないように彼の背中の上えと持っていく。 このまま、力を入れて振り下ろせば… 「殺すか?俺を」 「っ!?」 まだ、抱きしめられた状態。 今にも彼は殺されそうだと言うのに、反撃の様子はない。 刀も放りだされたまま、そこに落ちている。 それなのに俺の腕はピタリと止まってしまって、 何故か彼の次の言葉を待っていた。 「まぁ…それもいい…か」 「は…?何言ってんのさ…アンタ『政宗様』を守って死ぬんじゃなかったの?」 「あぁ。そう心に決めた。だが、今お前に殺されるのも、悪くねぇと思ってる」 そう言って、笑った。 もう、何が何だか、わからなくなってしまった。 アンタは、絶対『政宗様』を裏切らないはずだった。 そうだ。だからこそ、俺も旦那を裏切らない事が出来たんだ。 俺よりも『政宗様』を取るはずのアンタに、本気にならずにすんでいたんだ。 それなのに…。 「お前になら、殺されても後悔はねぇ」 それなのに。 「どうして…っ…!そんな事…言うんだよっ…!!!」 ガシャン、と武器を投げ捨てて、 暖かい彼の背中にしがみつく。 忘れた筈の涙は、これでもかと溢れて来て。 閉じ込めた筈の想いは、驚くほどに流れ出た。 今はもう、彼の事しか考えられない。 「佐助。愛してる」 耳元でささやかれて、 俺は静かに目を閉じた。 音をたてて壊れてゆく。 もう戻らない。 もう、戻れない。

「ばいばい、ばいばい。俺様、もう生きていけないや」 (ごめんね。旦那。俺様、貴方を裏切ります)



☆★あとがき★☆
結局死んだ!← あ、でも妄想では「忍」の佐助は死んで、 伊達の、つーか小十郎の捕虜的な何かになって、 監禁という名の同棲してればいいな…と←← しっかし、中途半端なとこで終わったな:::: だって予想より長くなったんだもの! 最早収拾つかなかったんだもの!! 誰か短編の書き方を教えてくれ! これじゃ中編だ\(^o^)/ てなわけで!此処まで読んでくださってありがとうございます! これからもがんばりますので、よろしくお願いいたします!! 管理人に応援メッセージ → web拍手