心の底から、


キミを愛してる。


心の底から、


キミを壊したい。


「好きだ」と囁いて、


弱まるキミの鼓動を感じて、


重く深いその瞳に俺だけを映して、


堕ち逝くキミを、愛でていたい。















愛しい人が出来た。 彼女は俺と一緒の忍で、俺の下で働いている。 命の危険が伴う仕事だけれど、 俺は決して命を落とすような無茶な仕事は彼女にはさせない。 どんなに人手が足りなかろうと、 どんなに彼女の力を他人が必要としていようと、 彼女を傷つける仕事は、絶対にさせない。 「変」 少しムッとした顔で、彼女が俺にそう言った。 それはきっと、彼女に暗殺や戦要請をださないせいだろう。 忍なのに、彼女に渡す仕事は文の運搬、 各国の偵察、それと旦那のお守り、団子の調達…。 主に最後のそれが多いから、忍としては少々足りなく思っていることだろう。 それほどまでに彼女の心境を分かっていながら、 俺はおどけた様子で笑って見せた。 「何が?」 「分かってるくせに。誤魔化さないで」 「えー?俺様ホントに分かんないよ?教えてよ、何が変なの?」 わざとらしく、首をかしげて問うと、 彼女はさらにムッと、眉間の皺を深くした。 そして、怒りを含めた声で、俺に言う。 「…何故私の仕事はいつも安全なものに限られてるの?」 笑顔はそのままに、しばらく黙っていると、 彼女は痺れを切らしたのか、 一歩ドンッと音を立てて俺に近づいた。 そして次は怒りと悲しみが混じった、 今にも俺の胸倉を掴む勢いで、その声を荒げた。 「この間の明智の暗殺…アレは私が行けば成功したはずよ。それなのに、何故若い子達を行かせたの…!? …私が行けば、死者が少なくて済んだじゃない!!!…なのにっ…どうしてっ…!!」 揺れる瞳は、強い力を持っていて、 部下達を亡くした悲しみを帯びていた。 あぁ…綺麗だ。 悲しみに繰れるキミのその表情。 その瞳。 全てがあまりにも綺麗で、 ずっと、見ていたいと思った。 「“どうして”?そんなの決まってるよ」 大切な、大切な俺の。 キミを誰にも渡しはしない。 この腕でキミを抱きしめて、 『愛』と言う鎖でキミを繋いで、 絶対に、離さない。 「お前が、大切だからだよ。他のどんな人より…ね」 渡したくない。 ずっと、俺だけのものでいて。 *** 最近、嫉妬心が強くなった。 自分が旦那の世話を彼女に言いつけたのに、 彼女が旦那と楽しそうに話している姿を見て、 どうしようもない黒い炎がゴウゴウと音を立てて燃え狂う。 彼女が、他の男や、仕事仲間とでさえ、一緒にいたり、 話したりすると、その度に炎が俺に甘い声で囁く。 “気ニ食ワナイラ、殺シテシマ” そして今、その声に抗う事が遂に出来なくなって、 自分を見失って、俺は武器を手に握っていた。 そして、縁側で鍛錬の休憩か、槍を側に居置いて彼女と共に座っている旦那に、 忍特有の速さで彼の懐に飛び込んだ。 旦那は俺が切り込んだのをすばやく感じ取り、 大型手裏剣を二槍で受け止めた。 「っ…!…佐助!?」 動揺で歪む顔。 そんなのお構い無しに、次々と旦那を切りつけていく。 それを辛うじて旦那も受け止める。 だが、決して打ち込んでは来なかった。 何度も旦那は俺の名を呼び、 『気は確かか』と叫んでいたが、 今の俺は嫉妬の炎にのまれ、 自分が自分でなくなっていた。 黒くドロリとした液体となって俺の心が熔けていき、 目の前の守るべき主は、 倒すべき憎きただの男と化して見えた。 『渡サナイ』 『俺ノモノダ』 「ヲ…奪ウ奴ハ、皆殺ス」 そう低く呟くと、 旦那は一瞬だが隙を見せた。 その隙を俺が見逃すはずも無く、 一瞬で旦那の背に移動し、 握る手裏剣を思いっきり振り落とした。 「佐助ぇ!!止めてぇぇぇ!!!!!!」 彼女の悲痛に染まったその声で、 俺はハッと我に返り、 振り落としていた手をピタリと止めた。 そしてガシャン…と音を立てて武器を放すと 動揺で震える手を眺めた。 「俺様…なんて事…」 感情に任せて、主に刃を向けた。 これは忍としても、家臣としても最低最悪の行為で、 俺はすぐに、懐からクナイを取り出し、 その場で自決しようとした。 するとクナイを握る俺の手を、 誰かが力強く止めた。 「何をしようとしているのだ!!佐助!!」 その力の主は、先ほど切りかかった旦那で。 俺の頭の中では『何故止めた?』と疑問がグルグルと巡回した。 目を見開いて、彼の顔を見ると、 彼は悲痛な表情を俺に向け、 すばやくクナイを奪い取った。 「…何故お主が死を選ぶ必要がある」 低い声でそう呟き、真っ直ぐに俺を見つめ続けた。 俺はその目に耐えられず、目線を下に落とし、 手をギュと握ってうなだれた。 「旦那に…刃を向けたからだよ。これは裏切りの他ないだろ?」 旦那はしばらく黙っていたが、 俺の側までツカツカと歩いてきて、思い切り俺の顔面を殴り飛ばした。 その衝撃で、俺は後ろに吹き飛ばされる。 「幸村様っ!?」 「、お主は黙っておれ。…佐助」 「………」 「今の一発は、今日の罰だ。これで解決。自決など考えるでない」 「なっ!!何言ってるのさ旦那!!こんなんで今日の罪が消えるはずないだろ!?」 「俺がいいと言ってる。それに、今の行動はお主自信が望んだ行動ではなかろう」 「っ!?」 「目を見れば分かる。あの時、お主は嫉妬に狂っていたように見えた。それほど、を愛しているということなのだろう」 「…旦那」 「俺も必要以上にはもうと関わらぬよう努力しよう。またお主に切りかかられても困るしな」 そうフッと旦那は笑うと、方向を変えて歩き出していた。 俺はその器の大きさに驚き、 そして慌ててその背に向かって頭を下げた。 旦那の気配が遠くに行ったのを感じ、 俺はゆっくりと頭を上げた。 すると、今度は横からバシッと音を立てて、 先ほど旦那に殴られた頬とは逆の頬に痛みが走る。 顔を前に向けると、 そこには目に涙を浮かべたが、息を荒げて立っていた。 「馬鹿っ!!馬鹿…馬鹿馬鹿大馬鹿野郎!!!」 「…」 「どうしてあんな事したのよっ…もしッ…幸村様が寛大なお方じゃなかったら…アンタ今頃っ!!」 「あの世に居ただろうねぇ」 「馬鹿!!そんな事言わないでよっ…!!」 涙を流しながら怒鳴る彼女が居た堪れなくなって、 俺はそっと、彼女を抱き寄せ、綺麗に光る髪を撫でた。 すると、彼女の腕も俺の背中へ移動し、 ギュッと服を掴むのを感じた。 「なぁ…聞いていい?」 「……何?」 「俺の事、好き?」 の涙を見て思った。 俺は、 彼女の色々な表情の中で、 悲しみに染まるその顔が、 どんなものより一番好きだと。 *** 「暗殺任務?」 「そ、お前行きたがってただろ?」 「別に…行きたがってたわけじゃ…」 「まぁ、久しぶりの忍らしい仕事なんだし。張り切って行こうぜ?」 「えっ?佐助も一緒なの?」 「そっ♪嬉しいだろ?」 彼女の手を引いて、近くの部屋へ連れて行く。 そこで一枚の計画書を開き、 今回の暗殺の手順を説明した。 彼女は久しぶりの緊張纏わる任務で興奮しているのか、 いつもより真面目に俺の話を聞いていた。 「…とまぁ、こんな感じかな。何か質問は?」 「…特にないよ。よくわかったし」 「そ♪じゃぁ、一刻たったら出発するから、準備しておいで」 「うん」 彼女はまだ緊張と興奮が残る面持ちで、 足早に部屋から出て行った。 「あ〜ぁ…あんなに張り切っちゃってまぁ…」 そう誰も居ない部屋で零すと、 喉の奥のほうから笑いがこみ上げてきた。 「くくっ…あははっ…はははは…!!」 実は、暗殺任務なんて最初から言われてない。 今日は俺と、二人とも非番を頂いている。 恋人同士の二人が休みに何処かへ出かけるなど、誰も不振には思わない。 何故彼女に嘘を付いたかだって? そんなの決まってるよ。 彼女を… を。 一生俺だケノものニするたメ…ダヨ? 「アハハハッ・・・ハハハ!!」 嬉シイ。 嬉シイ。 愛シイキミヲ、 俺ダケガ愛デテイラレルナンテ。 *** 予め、調査しておいた森には、 小さな小屋があるのを確認してあった。 暗殺と言っても、遠い場所だと告げたから、 俺が『此処で今日は過ごそう』と提案すれば、 彼女は笑みを浮かべながら『そうだね』と答えた。 安心しきった顔。 その表情も好きだけど、 俺が一番好きなのはソレジャナイ。 「夕飯、俺様が作るけど、何食べたい?」 「こんな山奥で何食べたいって言われても…」 「まぁまぁ。どんなものだって作ってやるからさ。何食べたい?」 「う〜ん…じゃぁお鍋」 「鍋ねぇ…寄せ鍋になっちゃうけどそれでもいい?」 「うん。佐助の料理はなんでもおいしいから」 彼女はまた笑った。 今日は良く笑う。 いつもはちょっとツンケンしてて、 あんまり素直じゃないって言うのに、 『佐助の料理はなんでもおいしいから』何て言っちゃって。 少し、ほんの少しだけど、 調子が狂ってしまう。 「ほら、出来たよ」 「わぁ!おいしそう!!」 お椀に具材を入れてやると、 彼女はそれを俺から受け取って、 見ているこっちが嬉しくなるような笑顔を浮かべて食べ始めた。 1つ1つ、味わうように食べ、 『おいしい』と何度も呟いた。 「あ〜おいしかった!ご馳走様」 「はい。お粗末様でした」 腹をポンポンとたたきながら、満足そうに彼女が言った。 俺は自分と彼女が使ったお椀と鍋を持ち、 洗い場へ持っていく。 水を汲んである桶にそれらを沈めると、 彼女が隣にやってきた。 「手伝うよ」 「ん。ありがと。じゃぁコレ濯いで」 「うん」 カチャカチャと、食器が擦れる音だけが部屋に響く。 その沈黙を最初に破ったのは彼女だった。 「ねぇ。佐助?」 「ん?何?」 「夫婦って…こんな感じなのかな」 「…うん、そーかもね」 「私たちが普通の人だったら、佐助とこんな風に暮らせたかな」 「うん…そーだといいね」 クスリと笑って俺が言うと、 彼女は『うん』と小さく零して、それ以上は何も言わなかった。 皿を洗い終わって、二人で早めに布団に入る。 大きな目が、暗闇でもわかる、俺を真っ直ぐに見つめていた。 俺は笑顔を浮かべて、そっと彼女の頭を撫でた。 「もう寝な?明日早いから」 「うん…ねぇ。佐助?」 「ん?」 「私の事、好き?」 彼女がそう言葉を紡ぐと、 俺の身体は無意識に動き、 そっと、彼女の唇へと自分のそれを重ねた。 「うん。好きだよ」 その暖かさは、 俺には辛い。 この愛しく想う心は 俺には重い。 嫉妬が心を蝕み、 キミの根を止める。 “もう、は俺だけのモノだよ” 心の中でそう呟き、 眠る彼女の心臓目掛け、 大型手裏剣を突き刺した。 ガキィン!! 「っ!?」 「えっ!?…さす…け?」 彼女の柔らかい肉を抉るはずだった手裏剣は、 危険を察知した彼女のクナイによって弾かれた。 そしてはすばやく俺から離れ、 クナイを構えて立っている。 コレは大きな誤算だった。 例え、俺が彼女を戦闘から外していたとしても、 彼女が鍛錬を怠るはずないのだ。 いつでも戦に出られるように、 いつでも主を守れるように、 自分を磨く事のできる人なのだから。 「ど…して…?…佐助が…?」 混乱して、目を大きく見開いて、 彼女がそう問うた。 俺は手に持っている大型手裏剣を持て余し、 ニヤリと笑いながら一歩彼女に近寄った。 「“どうして”?ソレ、この間も言ってたよね?」 そしてまた一歩、彼女に近寄ると、 彼女は後ろに一歩下がり、これ以上間合いを縮めさせないようにした。 の目は、同様と混乱、そして恐怖と悲しみに満ちている。 あぁ、綺麗だ。 その顔ガ見タカッタ。 誰見タコトガ無イ、俺ダケノ表情…。 「を…愛してイルカラダヨ?」 耳の奥で、俺の理性が音を立てながら崩れていく。 一度崩れたものは、もう元には戻れない。 俺は、嫉妬の炎にのまれてしまった。 俺の嫉妬は、人だけではなく、 動物も、植物も、虫も、水も、そして空気でさえ その対象だった。 彼女が見るもの、聞くもの、触れるもの。 その全部に嫉妬して、俺は俺で無くなった。 そして今、 俺は俺に嫉妬している。 彼女に触れる俺自身に。 だから、壊してしまおう。 キミが壊れてしまえば、 キミはもう俺だけのもの。 俺自身も触れることも出来なくなって、 俺だけのものになるんだ。 そうすれば、キミを愛していける。 「ダカラ、俺ノ為ニ死ンデ?」 そう笑いかけると、 彼女は深く息を吐いた。 そして手に持っていたクナイを離し、 ゆっくりと、体制を整えた。 ガタンと音を立てて、クナイが転がる様を見て、 今度は俺が目を丸くした。 「佐助…アンタさ、言ったよね」 静かにそう呟くと、 彼女はしっかりと俺を見つめ、 一歩、俺に近づいた。 「私の事、好きだって、言ったよね」 また一歩、彼女が俺に近づいた。 俺はまた笑顔を貼り付けて、 彼女の次の言葉を待った。 「アンタの“愛”が、私を殺す事なら…」 そして、彼女は俺の手の届くところまでやってきて、 その可愛らしい顔で、俺を見上げた。 「いいよ。死んであげる」 迷いも、何も無い目だった。 微かに、笑ったような感じすら与える瞳。 俺は彼女の顔に、そっと手を添えた。 「私ね、きっと、佐助が思ってる以上に、佐助が好きだよ」 俺が添えた手に、彼女は自分の両手を重ねた。 そして目をゆっくりと閉じ、 その場から動こうとしなかった。 俺は、彼女の頬に触れていない方の手に握られている手裏剣を、 強く、握り締め、 彼女の心臓目掛けて その刃を突き刺した。 ドサ…と何かが崩れ落ちる音がした。 虚ろな瞳をもった彼女が、そこに座っている。 ドクドクと、身体からまだ暖かい血が流れていた。 俺は自分の手にベットリと付いた彼女の血に、 ねっとりと舌を這わせ、彼女を味わった。 甘い、とろける様な蜜の味。 おいしい。オイシイ…。 「…」 そっと名前を呼んでも、彼女はもう反応しない。 俺はしゃがみ、そっと彼女の身体を抱き起こした。 力なく、彼女の頭はガクンと上を向き、 その瞳からは、一筋の涙が伝っていた。 心臓にそっと手を乗せると、 微かだけど、まだ脈を打っている。 そのたびに紅い蜜が傷口からあふれ出し、 やがてソレも、聞こえなくなった。 重い色をした瞳に俺を映すと、 俺は異常なまでに興奮した。 モウ、ハ俺ノモノ…。 黒い炎がまた囁く。
ハ、誰ヲ愛スルノ?”
「俺様の意思など関係なく、
       『愛シテルヨ、ダカラ、死ンデ?』
炎が誰かをまた求める」








★☆あとがき☆★ 初☆佐助夢っす!^^ というか、BASARAの夢初めてですね;;; どんだけ時間かかってんだよ!って自分で自分を叱ってる今日この頃。 さてさて! 今回は、『狂愛』をテーマに勝手にしてみて書いてみました!! いかがだったでしょうか? いや〜、何か『狂った愛ってヤツ…書いてみたいなぁ…』といきなり考え付いて、 そのままの勢いでやってみました☆ そしてそのイメージがピッタリ当てはまるのが佐助だっただけですね(´∀`;) 精一杯の『狂愛』ってやつを表現してみました! “愛してるから死んでくれ”って、どんだけだよって思います;; え〜、ではでは! 様!此処まで読んでくださってありがとうございます!! これからも亀歩きで頑張っていきたいと思いますので、 よろしくお願いいたしまーす^^ 管理人に応援メッセージ → web拍手